2002 FIFA World CUP 観戦紀行

2002.06.11 横浜国際球技場 アイルランド vs. サウジアラビア







Au revoir, France Adios, Argentina


W杯から、ジダンが消えた―――衝撃から2日。バティが消えた―――。
憎らしい程強かった「ル・ブルー」はもういない。アンリ&トレゼゲの最強ツートップは姿を消した。
追従するかのごとく、クレスポもベロンも消えた。さよならフランス、さよならアルゼンチン―――


解ってる。スウェーデンだって、最高にイカしたチームだって事。ラーションは最高の点取り屋だって事。
セネガルだって―――何も日本に遊びに来た訳じゃない。スカしたフランス野郎に一泡吹かせたのも悪くない。
アルゼンチンが2点しか取れないのが悪いのだ。それに決してイングランドが上だった訳じゃない。「世紀の一戦」にアルゼンチンが勝ったなら、消えていたのはベッカムの方。アディオス・アルゼンチン!バティの「最後の挑戦」は見事に空振り!


空虚な決勝トーナメントだって!?―――とんでもない!新しい伝説が開かれただけ。ジス・イズ・フットボール!
いつも常連が勝ったところで仕方無い。行ける所まで―――どこまでも飛んで行け!セネガルよ。スウェーデンよ―――


フランスが去った6/11、記念すべき私のW杯初観戦の日、自国で観戦できるおそらく最初で最後の―――。
スケジュールが決まった時は「アイルランドはいいとして・・・サウジ?なんでまた―――」と多少の落胆が
あったものの・・・そこはW杯。試合に優劣などありはしない。しかもアイルランドには、「自力の1次リーグ突破」が
懸かった重要な一戦。同時刻の「ドイツvs.カメルーン」の熱戦を憂いつつも、アイルランドへの応援を誓う。




なんだかんだでユニフォームもゲットしてたり(笑)。見事な球技場でした―――


試合開始の2時間ほど前に現地入り。両方とも「それなりチーム」な為か、想像した程の喧騒は無く
それでもかしこで聞こえるアイルランド・サポーターの騒ぎ声。「騒ぎ慣れしてるな」と感じる。
もちろん何言ってるかなんて解るはずも無いのだが・・・とにかく意気軒昂である。当然だが。


目立つサポーターは人気絶大!ひっつかまえて一緒に騒ぐ、写真に収まる。拙い英語で話しかける。
「これが異文化交流?」なんて考えはよぎらないが、ようやくW杯の実感が湧いて来た気がする。参加―――
「アイルランドと日本で一緒に決勝トーナメントに行こう!」と話しかけると、オヤジ大喜びで
「ニッポン!ニッポン!」と叫びまくってくれた。フットボールは、世界の合言葉なのだ―――――



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アイリッシュサポーター達と。右の「必勝オヤジ」は絶大な人気を誇っていた(笑)



スタジアムの中は熱気で充満している。飲みまくりのアイリッシュ。サウジの人は見かけない。残念。
空からは雨が落ちて来ていたが、最前列に陣取るサポーターの応援は止むことが無い。どうやら今日は
アイルランドのホームゲームの様相を呈していた―――アジアなのにサウジアラビアが可哀相、なのか?
恐らくそうではなく―――カメルーン戦・ドイツ戦で見せた「アイリッシュ魂」に心奪われたのだ。
諦める事を知らない無骨な頑固者、それがアイルランド人。恐らく今日も―――魂のこもったナイスゲームを!


試合開始。どこかぎこちなかった応援も、開始早々の「若きエース」ロビー・キーンの見事なボレーシュートが
決まってから、それなりに思えて来た。どこからともなく始まるウェーブ。手拍子。絶叫。アイルランドだけでなく
サウジアラビアのナイスプレーにも湧き上がる惜しみない拍手、声援。これが世界か、ワールドカップか―――!!




ピッチには激しい雨が降り注ぐ。試合は終始一貫してアイルランドペース・・・


後半、周囲から「ドイツ先制!」の声が聞こえて来る。そしてFKに合わせたブリーンの見事なゴールが決まる。
試合の帰趨はほぼ決した―――が、サウジにもせめて1点を!なんとなくサウジの攻撃時の応援が増えたような・・・
願いは叶わず、終了間際にダフのシュートが「アジア最高GK」のアルデアイエの手をはじく。3点目。雨―――か?
どうやらドイツも2点をリード。アイルランドの決勝トーナメント進出は確実だ。歌い続けるアイルランドサポーター。


後半45分は「あっという間」に通り過ぎた。気が付くと笛が鳴っていた。歓喜の選手たち。サポーターたち。
ほっておいたら一晩中歌っていたのではないか?しかし美しい勝利だった。相手がモチベーションが下がっている
サウジアラビアだったとしても―――だ。開幕前に「闘将」ロイ・キーンが帰国し、「ロイ抜きのアイルランドなんて」との
声が大多数を占めていたのだが!逆境に追い込まれるほどに反骨心が燃え上がる。これぞアイリッシュ魂―――
今日の試合はアイリッシュ魂を発揮するほどのものでは無かったようだ。それでも大いに盛り上がってくれ大満足。


後ろ髪を引かれる思いでスタジアムを後にする。駅に向かう人の波、波、波―――観衆「6万5千」。
どこからともなく始まるサポーターの大合唱。数少ないアイリッシュ達だ。自国の応援歌であろうか・・・?
ほどなくして、彼らの歌が「ニッポン!ニッポン!」の大合唱に変わった!周りの日本人サポーターに
敬意を表してなのか、はたまた「俺達の仕事は終わった。次はお前らだ―――」と言いたかっただけなのか―――

まったく、こいつらと来たら!なんと調子が良い事か!無骨で頑固なアイリッシュ。自国の勝利に沸きに湧き、
子供もオヤジも若造も・・・みんな子供みたいな顔しやがって!嬉しそうな顔しやがって―――羨ましい!
などと思いつつも、私の顔は喜びで一杯だ。素晴らしきかな、フットボール。オーレ!フットボール―――


東横線に揺られ、渋谷に着いた。あの熱狂が体に微かに残っているような感覚。
ふと前を見ると―――アイルランドのユニフォームを身に纏ったオヤジと目が合った―――

何故か私は無意識に右手を挙げて「Year!!!」とオヤジに叫んだ。なんとも自分らしくない行動、そして
オヤジも右手を挙げて「Very Good!」交わしたハイ・タッチ―――なんと清々しい気分―――!!



いつか、また逢える。そう、4年後―――約束の地は、ドイツ。






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